骨系統疾患の医療上の問題点
前述のように骨系統疾患は疾患の数が非常に多く、かつ個々の疾患は非常に希です。軟骨無形成症や骨形成不全症など少数の疾患を除けば、専門医といえども実際に遭遇、診療する機会のないものがほとんどです。また、骨格の成長、発達の異常であるため、年齢、時間の経過により臨床像が大きく変化してしまいます。臨床像に対する環境要因の与える影響も大きく、臨床像には大きな個人差があります。よって、骨系統疾患のより良い診断、治療のためには、広範囲の連携により、患者さん、医療者、各個人の持つ貴重な経験・情報を共有化し、その情報を蓄積・保存し、効率的に分配する必要性があります。
骨系統疾患コンソーシウムの設立の経緯
西村は1980年代前半から、池川は1980年代後半から、それぞれ骨系統疾患の臨床に取り組んできました。東京大学、心身障害児総合医療療育センターの骨系統疾患専門外来(池川)、清水市立病院,獨協大学(西村)、その他での専門外来の診療、全国各地の医師からのコンサルテーション、骨系統疾患の教育・啓蒙活動に個人として、取り組んでいました。その後、池川は1995年に臨床医を辞め、医科遺伝学の研究者となりましたが、骨系統疾患の原因究明、病態の解明を目指す基礎研究者として、骨系統疾患の患者さん、担当医との関わりを続けていました。その過程で、骨系統疾患の医療における経験・情報の共有化の為のネットワークの必要を強く感じるようになり、1990年代後半から、志を同じくする西村と様々な場面で連携して活動するようになりました。活動の過程で、多くの協力者・賛同者を得、それらの効率的なネットワーク化のために、理化学研究所・ 遺伝子多型研究センター・変形性関節症研究チーム(2018年より、生命医科学研究センター・骨関節疾患研究チームと改称)の援助の元に、2001年よりHome pageを立ち上げ、以来、正式に骨系統疾患コンソーシウム (Japanese Skeletal Dysplasia Consortium)として、日本国内の骨系統疾患の診断、研究に関する様々なサポート活動を本格的に行うようになりました。