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骨系統疾患とは
骨系統疾患(skeletal dysplasia)とは、骨・軟骨など骨格を形成する組織の成長・発達・分化の障害により、骨格の異常をきたす疾患の総称です1)。そのほとんどは遺伝性の疾患(単一遺伝子病)で、比較的よく臨床像が規定されているものだけでも 200 以上の疾患があります。骨軟骨異形成症 (osteochondrodysplasia)と異骨症 (dysostosis)の2つのカテゴリーに大別されます。
骨軟骨異形成症とは、骨・軟骨の成長・分化・機能の全身的、系統的障害をきたす疾患の総称です。代表的な疾患に軟骨無形成症 (achondroplasia)、骨形成不全症 (osteogenesis imperfecta)があります。狭義には、骨系統疾患とはこの骨軟骨異形成症を指します。
一方、異骨症は、特定の骨(例えば、頭蓋骨、指骨、あるいはそれらの組み合わせ)の障害です。局所的、部位特異的な骨・軟骨の発生・分化・成長の異常と考えられます。指の局所的の異常である多指症、合指症や、頭と指の異常の組み合わせである頭蓋縫合早期癒合症(craniosynostosis;Crouzon病、Apert症候群など)が代表的疾患です。
骨軟骨異形成症は基本的に全身の異常であり、明らかなメンデル式の遺伝形式を示すものが多いので、古くから遺伝の関与が考えられてきました。一方、異骨症は局所の病変で、家族歴が明確でないものが多数です。そのため、その原因は遺伝とは無関係で、多くは母体内での機械的な圧迫や薬剤などの外因による胎児発達の異常と考えられていました。しかし現在では、どちらも遺伝子の異常による疾患/疾患群と捉えられています。いずれのカテゴリーにおいても、次々に原因となる遺伝子(疾患遺伝子)がみつかっています。
骨系統疾患の分類、診断
骨系統疾患は数が多く、病像も複雑なため、その整理・分類、用語、疾患名の標準化のために、国際分類が作られています。これは、当初(1969年)はヨーロッパ放射線学会を中心とする放射線科、臨床遺伝学者の小さな専門家グループがまとめた疾患の命名法のひとつの試案に過ぎませんでした2)。症例の集積、疾患概念の変遷、病因の研究の進歩に伴い、2002年までに5度、改訂され、現在では分子生物学者、分子遺伝学者も作成に加わり、世界的な基準となっています。目下の骨系統疾患の診断は、この国際分類に基づいて行われています。
初期の分類は前述の骨軟骨異形成症と異骨症に加え、特発性骨溶解症、骨病変を伴うその他の疾患、染色体異常症、原発性代謝異常といった、骨格に異常をきたすあらゆる疾患(広義にはこれらも骨系統疾患のカテゴリーに入る)を含めた包括的な分類でした。しかし、あまりに範囲が広汎なため、最新の分類(2002年改訂)3)では骨格に一次的異常を持つ疾患、すなわち、前述の骨軟骨異形成症と異骨症のみを扱っています。分類の基本的なコンセプトは、X線像の類似性を基にした疾患のグループ化で、代表的疾患の単純X線像をもとにそれにX線像の似たものもまとめあげ、骨軟骨異形成症全体を33の、異骨症を3つの『グループ』に分けています。これらのグループ(臨床像)と疾患遺伝子がよく対応することが明らかになってきています。
文献
1. 西村玄: 骨系統疾患X線アトラス. 医学書院, 1993
2. 池川志郎:骨系統疾患国際命名法の改訂について. 整形外科 50: 1129-1131, 1999
3. Hall CM: International nosology and classification of constitutional disorders of bone (2001). Am J Med Genet 113(1): 65-77, 2002
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